GERBERの"G"を冠したメーカー
入院中であったブツが無事退院してきた。
米国GERBER社製のFolding Hunter
ブレードのがたつきが治っているのはもちろんのこと、外してあったクルミのハンドル材も綺麗に装着され、まるで新品かと見紛うばかりに綺麗になって戻ってきた。
修理していただいたメーカーによれば、”まだまだ10年~20年は使える”とのことである。
"G"の文字に込められたメーカーの思いが伝わってくるような仕事ぶりに感動した。
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今回、修理をしてくれたメーカーは、日本が世界に誇る刃物メーカーのひとつである岐阜県のG.SAKAI。
同社は、1970年代後半、米国GERBER社と技術提携を行い、SilverNightなどの製品をOEMとして同社に提供していたなど、GERBER社との繋がりが深く、1987年にGERBER社がフィンランドの刃物メーカーであるFISKERSに買収されて提携関係が終了した後も社名に”ガーバー”を使用することを許された唯一のメーカーである。
そう、G.SAKAIの"G"は"GERBER"の"G"なのである。
そんなメーカーだからこそ、自社で製造した製品でなくても修理に応じてくれたのだろう。
本家GERBERではもはや修理を受け付けなくなってしまった古いモデルだが、G.SAKAIのお陰で元通りの機能を取り戻し、無事、退院となった次第。
"G"の文字はやはり伊達ではなかったのである。
ブレードは440Cシリーズのステインレス鋼。
トレードマークであるエクスカリバーの横に Stainless を意味する"S"の文字が見える。
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実際にどのようにして修理を施したのかは目視で確認できないが、メールでのやり取りからすると、段付ピンに相当するよう、通常のピンに座金を組み合わせてブレードとのガタを無くし、真鍮製ライナーにピンをカシメ込んで固定しているようである。
ブレード厚よりも、ロッキングバー&スプリング厚のほうが大きいという、信じられないような(ある意味古し米国の製品らしい)雑な品質。
もともとが粗雑な品質で有名な米国製品らしく、開いたときにブレードのラッチに嵌り一体となるロッキングバー&スプリングの厚みがブレードの厚みよりも僅かに厚いという、根本的に横方向のガタが生じやすい欠陥構造であるにも関わらず、上がってきた修理品は、ブレードを閉じた時こそ、ライナーとブレードとの間に僅かな隙間が確認できるものの、ブレードを開くにつれて微妙にテンションが掛かり始め、ブレードをロックしたときには横方向のガタが完璧に押さえられるように調整されている。
ごく僅かであるが、ブレードと真鍮製ライナーの間に隙間が確認できる。
こんな状態にも関わらず、ブレードロック時には横方向のガタが修正されている。
脱帽である。
長年の使用でくすんでしまっていた真鍮製ライナーも綺麗に研磨されて、まるで新品のような輝きと、滑らかで一体感のある接合面の仕上がり。
右が今回修理した440Cモデルで、左が高速度鋼(通称ハイス鋼)製のモデル。
鋼材の違いは、エクスカリバーの横の"S"や"HS"の文字で区別する。
今回修理したのは、ブレードが440Cシリーズのステインレス鋼モデルだが、ブレード鋼材がハイス鋼モデルのほうが、ステインレス鋼に比べて高硬度(HRc60~62)で耐摩耗性に優れ、長切れする上に、鋼材そのものが高価であるばかりか、防錆のために硬質クロムメッキを更に施すなど、およそファクトリー製とは思えない手の込みようという点から、一般にハイス鋼モデルのほうが人気が高い。
しかし、440Cスティンレスのモデルでも、当時のGERBER製440Cは、他の440Cとは別モノと言われるほど焼き入れ硬度が高く(一説にはHRc=60度近いとの噂も)、実際、ハイス鋼モデルと比べても遜色ないくらいに良く切れるし、長切れもする。
それに、耐食性に優れ、フィールドでも簡単に研ぎ直しが利くなど利点も多々あり、一概にハイス鋼だけが良いということではない。
オールドガーバーというと、ハイス鋼ばかりに目が行くが、440Cステインレスモデルももっと評価されても良いと思うのだが...
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